21世紀協会
パーマカルチャー研修報告会
司会:池田晶子(21世紀協会理事長)
書記:紫垣伸也
日時:2008年3月20日
場所:八王子市民活動センター
参加者:池田(理事長)、村田、伊藤、浅海、金子、田畑、森川、山波、樺山、鈴木、中沢、鈴木(アイコ)、松本、紫垣
1、 理事長挨拶・参加者自己紹介
2、 パーマカルチャー研修報告(報告者:森川)
〔森川悠太について:2007年10月~2008年3月の約半年間、21世紀協会のインターンとして外務省の支援を受けてオーストラリア(Lismore)にある、パーマカルチャーリサーチインスティチュートにて、パーマカルチャーの研修に参加。〕
<パーマカルチャーとは(その①:全体編)>
*パーマカルチャーとは:人間にとって持続可能な社会、環境を作り出すためのデザイン。
*パーマカルチャー=パーマネント(永遠)+アグリカルチャー(農業)またはカルチャー(文化)。
ローマクラブ作成による、成長の限界の図によれば、有効活用できる資源は年々減少傾向にあり、それにある時期まで反比例する形で人口は増加していく。このままいけば、地球資源が枯渇することで、資源に依存してきた人間生活にも危機が生じることは目に見えている。このような悲惨な人類の結末を回避するための一助として、パーマカルチャーが存在する。
*パーマカルチャーを学びながら考えること:「問題は途上国だけではなく、先進国にも存在する。パーマカルチャーを実践していかなければならないのは、途上国だけでは不十分」だと思う。
地球資源問題
・資源を脅かす原因:1位土壌浸食、2位森林減少、3位汚染
・ 先進国アメリカの石油使用量の事例:使用量1位は食料、2位は車、3位は住宅
*パーマカルチャー提唱者の基本:ビル モリソン「プロブレム イズ ソルーション(問題が答えだ)」
<パーマカルチャーとは(その②:具体編)>
@パーマカルチャーは「つながり」
・Diversity → Stability → Fertility → Productivity → Local Economy →
永続的な文化へ
・化学肥料は1年半、牛糞は5年、堆肥は20年・・・より永続的なものを求めるならばなにがよいか。
・System – Input – Character – Output – System…
@パーマカルチャーは「合理性」
・大事なのは観察:例)新しい技術である、グーグルアースは、土地観察に適している。
@パーマカルチャーは「循環性」
例)トイレ:ぼっとん便所方式の応用。用を足した後、落ち葉を少し加える。それによって発酵度が促進し、人糞(固形物)がよりよい金肥となる。液体となった金肥は液肥として活用される。
例)鶏の循環利用:鶏は人間の食料のためという単純なものではない。生きている鶏が人間に何をしてくれるか、何を生み出すかを分析し、効率的な循環要因を探る。
@パーマカルチャーは「スピードアップ」
・自然の循環性をフル活用する。
例)スウェイル:斜面等高線上に沿って溝を掘る。雨水は自然に溝にたまり、植物の成長に必要な水を蓄える。溝の高い方にマメ科の木を植え、窒素固定。固定された窒素は徐々に水のたまった溝に流れ、栄養度の高い水を作る。溝の低い側に窒素を多く必要とする木々を植え、窒素量の多い水を効果的に吸収し、木々の成長を早める。育った木から生じる落ち葉が地面に落ち、発酵の過程を行うことで自然に土壌にマルチの能力が蓄えられる。また、溝の中には溝を構成する土壌を強化するためにグラウンドカバーとなる半水生の植物を植える。
・ 自然と放任の違いの理解:人力を介入させない放任によっても山の木々が育つが、パーマカルチャーの論理に従い、自然の原理を活かした的確な人力を加えれば、木々の成長は放任時の速度よりもより速くなる。
例)ハーブスパイラル:畑を軽斜面を描きながら渦上に作り、日が当たるところ、あたらないところ、乾燥しやすいところ、しにくいところ、といった一つの畑内に特徴を持たせ、その特徴に適した植物を適所に植えることで、一箇所で多種多様な植物を栽培することが出来る。
<まとめ>
●パーマカルチャーの倫理の理解
・ 人への配慮:パーマカルチャーは豊かな自然作りであると共に、その自然と共生を行う人間の豊かな生活のためでもある、ということ。
・ 地球への配慮:加速する自然環境破壊を食い止め、豊かな地球を維持、成長させる。
・ 余剰物の還元:何も考えなければ単なる老廃物でしかないものに、ちょっとした工夫を加えて、豊かな自然を作り出すエネルギーとして活用する(Fair Share)。
● 課題と展望:
純粋なパーマカルチャーだけで生活する、というのはまだまだ難しい。260haに約80世帯が住むエコビレッジの住民も90%がビレッジ内以外で別の仕事を持ちながら生計を立てている。日本国内においても、パーマカルチャーを生業としている人の数は非常に少ないという現実がある。しかし、そういった現実を見据えつつも未来の地球環境づくりを考えた際にパーマカルチャーを意識した農村開発、都市設計は有用である。パーマカルチャーは、ミンドロ事業地だけでなく、現在自宅の庭でも実践しており、地域を越えた形でその地域にあわせてどのように応用できるのかを試行錯誤中。
3、ミンドロ島パーマカルチャー講習会参加報告(報告者:田畑)
<21世紀協会ミンドロ島サンタクルス事務所において、パーマカルチャーの実践を行いながら、パーマカルチャーの基礎について学ぶ。>
<講習内容>
① チキントラクター
畑として用いたい土地に移動可能な籠を置き、その中に鶏を入れる。かごの中の鶏は、地面をほじり、ついばみ、糞をしながら餌を探すのだが、その行動によって地面は徐々に耕されていき、畑の原型が作られていく。数日後、地面が鶏によって耕されることが確認できると、かごと鶏は、また別の畑になって欲しい土地に移動される。
② ペーパーマルチ
雨の少ない乾燥地域において植物の成長のための水分の確保は重要である。そこで、植物の周囲の土壌に一度水に浸した紙を重ね置くことで、土は長期間に渡り湿り気を維持し、植物に持続的な水分を補給し続ける。
③ バナナサークル
サンタクルス事務所は手動ポンプ式の井戸を用いて水を手に入れる。人々は井戸の周辺で洗濯や体を洗う。その洗濯や体を洗う際に流れる水を利用する。具体的には、井戸から溝を引き、井戸の外側に水のたまりやすい穴を掘る。その穴の周辺にバナナ、キャッサバ、パパイヤなどを植え、たまった水を吸収させ、成長を促す。同時に穴の中には、籾殻などを入れ、水と調合させ発行させることで肥料として用いる。この試みの課題としては、洗濯や体を洗う際に、洗剤、石鹸などの混ざった水が多く含まれるという点で、このような水を吸収したバナナ、パパイヤなどの実が食用として適したものでありえるのかどうかということ。
④ 敷地デザイン
三画測量を用いて事業地の敷地を測量しながら、敷地内の問題点とその問題点を解決するにはどうすればよいかについて住民(敷地利用者)と考える。→課題:基本的数学能力が要されるこの手法に住民がどこまで理解できるか。
⑤ キーホールガーデン
・ 庭の縁を曲線状、もしくは窪みを作り、庭の中にある全ての植物に手が届くように設計し、植物を満遍なく成長させるように手助けする。植物を植える方法は、パーマカルチャー方式(例:虫がつきやすい茄子の隣には虫が嫌がるハーブを植える)
⑥ かまど作り
事業地内に事業地内もしくは周辺で取れる土を用いて、かまどを作り、自家製のパンなどを作る→今回はかまどを作る時点で実習が終了したため、実際にパンや食物がかまどで調理できるのかについては今後の課題となる。
<まとめ>
以上の実施講習は、全て短期間で行われたため、試作段階であり、まだ長期的な実験結果が得られていない。近日より田畑がミンドロにインターン生として長期滞在することになるので、その際に以上の講習がどのように実際に活かされ、活かされないのであれば、どのように改良を加えればよいかについて試行錯誤が繰り返される予定。
4、ミンドロ事業地報告(報告者:池田)
<カンルアン村デザイン・ゾーニング>
自然を活かしながら、村の地形をいかに効果的に、パーマカルチャー的に活かすことができるか。
村の側を流れる川周辺には水田、畑、果樹など水を多く必要とする農業ゾーンを設置。その隣に居住ゾーンを設け、住居、集会所兼敷地教室などを設置。集会所では、コミュニティオーガナイザーを中心とした村のデザインが住民と共に行われる。居住ゾーンの近くには家畜ゾーンを設け、人の管理が行き届きやすいようにする。川と反対側にある傾斜地は自然ゾーンとして残しておき、自然の可能性を維持しておく。村から少しはなれたところには森林ゾーンを設置し、強い生育能力のあるマメ科などの木々を植えることで土質を高め、村の周辺に緑を蓄える。
質問:マンニャン族は半猟半農の移動的生活スタイルとしている、ということを聞いている。パーマカルチャーは、農を主体とした定住的スタイルになるが、それを広めていくことは、マンニャン族の従来の生活スタイルを脅かすことにならないか?
池田:パーマカルチャーの実践により生活スタイルは変化していく。なので、従来の半猟半農の生活を維持したい、と考えている住民には適さないかもしれない。しかし、半猟半農の生活から、農を主体とした定住スタイルに移行したい、と考えているマンニャン族住民は多く、その住民のニーズにこたえる、という形で、活動を展開している。
<報告会感想、全体まとめ(池田)>
森川の意見にもあるように、現在のパーマカルチャーから、
① 現在の地球環境問題は、途上国だけでなく、先進国にも存在する。
② パーマカルチャーのみで自給自足していくのは難しい。
という課題に直面していることがわかる。
しかし、地球は刻一刻と汚染への一途をたどり、このままの流れを継続していくと究極的には人類滅亡の危機にさらされる可能性も否めない現状にまで来ている。こういった世界の流れに軌道修正を促し、持続可能な地球作りを実践していくためには、昨今の時代の流れにそぐわないがゆえに直面している課題を持っているパーマカルチャーの原理を徐々に粘り強く世の中に実践していくことが重要であると考える。
また、この原理の実践は、現在の世界の主流である経済至上主義、あるいは資本主義に反する、もしくは超えるものであるかもしれないものであることを認識すると、主流とは別の流れを世界に起こすためには、それなりの困難が生じることはやむをえない。
21世紀協会は、フィリピン・ミンドロ島マンニャン族の農村開発事業という、特定した地域で活動を展開しているが、その活動から得られる結果、成果をミンドロ島内だけにおいてではなく、全世界へ応用させていこうという志を持っており、①、②の課題は現代社会に生きる我々にとっては当然出てくる課題であり、同時にそれらをいかに解決すべきかを考え、実践していくことが21世紀協会の存在意義である。 以上。
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